勉強会 :認知症(5)
よくある事例と対応の仕方
○食事を食べたのに「食べてない」と言う
(家庭にて)30分前に朝食を食べたのに、「食事はまだか、わしゃ腹が減ってしょうがない。おまえ、早く食事を出さんか」と言う。
(施設にて)「おーい、私はおなかがすいて死にそうだ。誰か私を助けてください。私は殺されます。私は○田△子です。どうか私を助けてください。何か食べるものをください」と大声で言いながら廊下をはいずる。
※対応例
・ついさっき食事したことを優しく説明して納得してもらう
・無視して放っておく
・お菓子と飲み物、おにぎりなどを目の前に置く
・何としてでも食事を用意する
・ひたすら、謝りの言葉を連発する
・馬鹿なことは言わないようにと叱りつける
○おすすめの対応は・・・
まずは「ごめんなさいね、今日は忙しくてご飯の準備が遅れてしまって・・・」などと謝りの言葉をかけ、「もう少し待ってくれたら準備が出来ますから、お茶とお菓子でも食べて待っててね」とお茶とお菓子を出して明るく対応する。また、テレビをつけて関心をそちらに向けたり、本人の好きなことを話したりして、食事と関係ない話題を展開する。
食べたのに「食べてない」と言うのは、アルツハイマー型認知症の中期以降にかけて多く見られる状態で、対応の仕方によっては、けんかや暴言、暴力行為に発展しかねない。うまく対応することで落ち着いた状態が戻り、トラブルを回避できる。もちろん、同じことがまた次の食事の後に繰り返される可能性はある。
○「家に帰る」「家に帰りたい」と言う
(施設にて)「私は家に大事なものがありまして、家族が心配で、お金もありませんし、家に帰りたい・・・」と感情失禁の状態になる。
(施設にて)ナースステーションに来て、「先生、私はどっこも悪くないから帰してください。家はすぐそこで歩いて行けます。家賃ももらわないかんし、家も放ったままですから、明日帰してください」と言う。
(家庭にて)自分の家なのに、「ほんとにお世話になったな、今日の食事は美味しかった。じゃ、おいとまするわ」と席を立って家を出て行こうとする。
※対応例
・「いいですよ、気をつけてお帰りください」と言う
・「ここがあなたの今住んでいるところですよ」と丁寧に説明する
・「今日は遅いですから、明日にでも帰るようにしましょう」と言う
・無視して放っておく
・馬鹿なことを言わないようにと強く叱る
・「そこまで一緒にお送りしましょう」と言って、一緒に外出する
・「帰る前に、お茶とお菓子でも食べてからお帰りください」と、お茶とお菓子を出す
○おすすめの対応は・・・
家庭の場合は、「帰る前にお茶とお菓子でも・・・」と言って、「じゃあそれをいただいてからにしようか」とくれば、50%くらいは帰ることを忘れてくれる可能性がある。「やっぱり帰る」ときたら、「今日は遅いから一晩泊まって・・・」と言って「泊まろう」とくればほぼ大丈夫。しかし「やっぱり帰る」となれば、送っていくと言って一緒に外出するしかないだろう。
施設の場合は、「いいですよ、では今から手続きをしますから、今日の夕方か明日の朝には帰れます。家のかたが迎えに来るようにしておきますから、来られたらすぐにお呼びしますね。どうぞお部屋でお待ちください」と穏やかに言う。本人の言うことを理解して受容しますという態度をとる。嘘の約束をしていいのかと思うが、本人は数時間後、数分後には忘れている可能性が高い。本人が訴えているその時その瞬間に、満足を与えること、納得してもらうことが重要であり、それによってさらなる異常な行動の発生を抑える確率が高くなる。
本人は、自分が認知症のために入院(入所)しているとは夢にも思っていないので、いつでも退院(退所)出来ると思い込んでいる。また、家庭の場合、自分がいる場所が自分の住んでいる家ではない、という誤った認識がある。どちらも本人にとっては主張していることが事実であり、真実なのだ。それに対して誤りだと訂正するのはナンセンスであり、本人にとっては不愉快なこと。「本人にとっての真実」を認め、受容して、本人の満足する方向に沿って対応することが本人の幸せにつながる。
アルツハイマー型だと中期程度で、時間の見当識障害に加えて場所の見当識障害がみられるようになる。脳血管性では、どのレベルで出現するかは予想できない。
このような、本人の満足する対応をすることは、本人にとって快適な環境を作ること、広い意味での環境整備ということになり、これによって異常な行動が減少することは経験的に明らかではあるが、一方で、介護者に精神的な負担を負わせることになる。特に在宅で家族介護の場合、いかに介護者の精神的負担を少なくして介護を継続できるようにするか。各種の介護サービスを利用したり、本人だけでなく介護者も含めた家族の皆が幸せに生活できる環境整備が重要となる。
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