[どんなことが虐待に当たるか]
・身体的虐待
暴力行為などで、身体に傷やあざ、痛みを与える行為や、
外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為
例)平手打ち、殴る、蹴る、つねる、火傷をさせる、縛る、
無理やり食事を口に入れる、一室に閉じ込める
・心理的虐待
脅しや侮辱などの言葉、威圧的な態度、無視、嫌がらせなどによって
精神的、情緒的に苦痛を与えること
例)怒鳴る、ののしる、嘲笑する、侮辱をこめて子ども扱いする、
意図的に無視する、愛着のあるものを破壊する
・性的虐待
本人との間で合意が形成されていないあらゆる形態の性的行為、
またはその強要
例)排泄失敗の懲罰のため下半身を裸にして放置する、
セックスを強要する、人のいるところでおむつ交換する
・経済的虐待(搾取)
本人の合意なしに財産や金銭を使用し、
本人の希望する金銭の使用を制限すること
例)必要な金銭を渡さない、使わせない、
本人の預貯金や不動産を勝手に処分する
・世話の放棄・怠慢(ネグレクト)
意図的か否かにかかわらず介護や世話を放棄し、
高齢者の生活環境や身体・精神状況を悪化させること
例)身体を不衛生なまま放置、栄養失調状態、劣悪な環境での放置、
医療介護サービスを受けさせない
[虐待の発生]
高齢者虐待はさまざまな要因が絡み合って発生することを理解する。
①状況ストレス説
ケアの責任が虐待者のストレスとなり、自身の他のストレスに加わる。
ストレスが蓄積すると虐待という形で噴出すると考える説。
②精神病理説
子ども(介護者)が(例えばアルコール依存症などの)心理社会的問題を抱えて
高齢者に依存しており、ケア役割を適切に果たせない。
子供の心理社会的問題が虐待であると捉える説。
③役割理論説
高齢者の老化に伴う役割の変化が、家族に戸惑いや苛立ちを与え、
虐待が生じる。親が子供にケアされるという役割逆転による戸惑いや、
回復・改善が見られない苛立ちが虐待をもたらすと考える説。
④構造化された依存性説
社会が高齢者を価値あるものを生み出さない依存的存在として扱い、
経済的、政治的、社会的に無力にする。この排斥が虐待を発生させるとする。
自立に価値をおく近代社会では、高齢者は社会的に低い地位に位置づけられ、
このことが虐待を生じやすくさせるという説。
⑤生態学説
高齢者を取り巻く社会的要因、文化的要因、家族状況等、
さまざまな要因が相互に影響しあって虐待を発生させていると考える説。
関連要因
A・社会的要因 : 経済発展の遅れ、社会政策の貧困、福祉サービスの不足
B・文化的要因 : エイジズム(高齢者差別)、家父長制イデオロギー、女性差別
C・ソーシャルサポートネットワーク : 親族・近隣からの援助の欠如、社会的孤立
D・介護問題 : 介護の負担感や疲れ、意欲欠如、知識不足
E・家族状況 : 家族関係不和・対立、無関心、共依存関係、住環境の悪さ、
責任感の共有欠如
F・高齢者の個人的要因 : 性格的偏り、精神疾患、依存症、経済的問題、
過去に虐待した体験など
G・虐待者の個人的要因 : 性格的偏り、精神疾患、依存症、経済的問題、
被虐待体験など
例)右半身麻痺で寝たきりの姑の介護を、同居の長男の嫁が放棄している事例について考えてみる。
放棄の直接の理由は、長年の嫁姑関係の悪さ(=E)や長男の妻の強い介護負担感(=D)であるが、このEやDを生み出している要因には、姑の極端な完ぺき主義的性格(=F)、その地域に根強い「老親の世話は長男の嫁がして当たり前」という家父長的イデオロギー(=B)、その価値観を身につけた長男や別居家族の非協力、ねぎらいのなさ(=C)、などがある。このように理解すれば、虐待予防にはこの地域の人々の介護に関する意識を変えることも重要ということになる。
高齢化率が相対的に低い国々においては、介護問題(=D)や家族状況(=E)よりも、経済発展の遅れや社会政策の貧困(=A)、女性差別(=B)などが、より基底的な発生関連要因となっている傾向が見られる。(日本高齢者虐待防止センター編「高齢者虐待防止トレーニングブック」より)

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